枚方のラッパーDraw41stアルバム『Ride on Time』を語りつくした8000字インタビュー


 

アルバムへの投資は、寝られへんぐらい怖くなる。寝られへんから電卓出して紙に書いて、何枚売ったらええねんて

 

── Draw4さんの特徴として、葛藤はあっても屈折してないというか、「弱さも出せる」芯の強さを感じます。

 

初めは、強い所を書こう、強い所を書こうとしてたんです。けど、Subってラッパーに「Draw4はポジティブを歌っているつもりかも知らんけど、そこにはネガティブも含まれてるんやで。Liveを見たら分かる」って言われたんですよ。それをきっかけに自分のネガも考え出しました。だからネガですら曲で清算できるようにと最近は考えますね。

 

哲学みたいな話になるんですけど、過去は変えれないけど自分がいま心を入れかえて新しいスタンスになることで、過去のあり方は変わる。ライブで泣いた、落ち込んだという経験があるから、“弱さ”すら“強さ”に変えられるラッパーやと思っています。

 

── ライブのMCでも、アルバム制作への投資は怖いという葛藤をさらけ出してましたからね。だからこそ共感し、応援もしたくなります。

 

実際、怖いですね。やっぱ1stアルバム作る、MV出すってなったら大金が飛ぶんです。どのラッパーでも。しかも自分は良い音質と環境で Cosaqu さんに録ってもらうってなった時に、ほんまに寝られへんぐらい怖くなりました。寝られへんから電卓出して紙に書いて、何枚売ったらええねんて。現実的な数字が出てくるから余計に怖くなって。

 

だから、SCLARCH (編注:この取材をさせてもらったスケーター/HIPHOPショップ)にき来て、怖いですこの投資って相談しました。けど KOSHI 君がこの店作る時にどんだけ借金したんかって聞いたんで、それに比べると大した事ないなと。

 

これから盤を出して、何枚売ったらチャラってのは決まってるんです。でもそれが目的じゃなく、自分は届けることが第一の目的なんで、届けた上でお金が入って、そのお金で次の音楽が作れたら一番いい流れだと思っています。

 

それもさっき言った話で、ちょっと考え方を変えればいいんです。あの時の投資があるから、自分はでかくなったという考え方にすれば今は何も思わないですね。むしろあの時決断した自分を褒めたいですね。

 

 

|Draw4 / Keep ma mind|

(アルバム『Ride on Time』 4曲目に収録)

 

── そのKOSHI さんがビートメーカーの Missy さんを紹介してくれたそうですね。

 

自分の代表曲である「Kanjou mid night」を作ってくれた人で、あの曲はあの入りやからクラシックになったと思っています。

 

|Draw4 / Kanjou mid night|

(アルバム『Ride on Time』 8曲目に収録)

 


── フィルターを絞った所から入るイントロは、ビートが入ってさらに盛り上がります。


大阪のヘッズやったら全員歌えると思っています。元々 Missy さんは女性スケーターで、音をよく聴いたら女性らしさがあります。KOSHI さんの紹介があったから「Kanjou mid night」が作られる。あの曲があったから、色々なところからブッキングが増える。盤を刷ってプレスして外に飛んで広がる、さらに残り続けるみたいな感じです。めっちゃ小ちゃな繋がりが形になって大きくなって欲しいですね。


Missy さんは、いま子供を産んで活動休んでるんで、戻ってきたらやりたいです。アルバムでは9曲目「Romance」も提供してもらってます。

 

── 「Kanjou mid night」は曲順からしてこのアルバムの中心にありますもんね。

 

アルバムを作るきっかけになったのも、この曲が入ったアルバムを作りたいと言うところからなんです。一番自分を動かした曲でもあります。

 

── あと「Intro -life」に続く2曲目「溺れ」は、Draw4君のイメージとは違ってて驚きました。

 

アルバムを聴かせるにあたって、初めにインパクトを与えたいと思いました。今から15曲聴いてもらうってなった時の一番肝心な部分をあえて僕らしくない曲にしようと。

 

── やっぱりあえての選曲だったんですね。

 

Blind SpotDJ RIN に「アルバムの1曲目で、始まりっぽいヤバいの頼む」と電話したらあのビートが送られてきました。来たなと。

 

「さあ始めよう  THIS IS RIDE ON TIME」というリリックから始まって、色々な物事に出会って、欲に溺れることもあれば、音楽に溺れることもあれば、人ってかき消されて小さくなっていくんですけど、その中で自分を保てって言う僕らしさを一発目に出しました。


── 配信だけでなく、CD盤を出すにあたりこだわった点はありますか?

 

ジャケットは、竹山 樹 君という専門学生が描いてくれました。最初は絵だけにしようとしてたんですけど、KZ さんに相談したら「1stアルバムやから、自分のプロモーションもあるし、しかもDraw4 はMVを多く出している訳でもないし、バトルも出てないから、自分のイラストを入れたほうがいい」と言ってもらいました。そこから無理を言って自分のイラストを入れてもらい、歌詞もデザインにしてもらいました。

 

表紙のジャケットを開いてもらったら分かるんですけど、直筆の手紙をデータ化したものが貼ってあります。[ THANKS FOR ]ではお世話になった人の名前を書いています。配信が流通の中心になっている中で、ブックレットも凝りました。色々な仕掛けがあるので、CD盤ならではの嬉しさや温かさを感じて欲しいです。ぜひ手に取って欲しいですね。

 

今後「Hey girl」のMVが出るんですけど、その映像も竹山 樹君が撮ってくれました。

 

|Draw4 / Hey girl|

(アルバム『Ride on Time』 11曲目に収録)

 


── 話を聞いていると、曲にはそれぞれテーマがあって、ノリ一発ではないことが分かります。一本筋の通ったアルバムらしいアルバムになっていますね。

 

このアルバムは、「いつまでも風化せず 時の人間であり輝き続けたい」というテーマで曲を揃えました。タイトルも時代に乗っかれという意味で「Ride on Time」となっています。

 

── 最後に今後の予定を教えて下さい。

 

今後は、このアルバムの通りに活動していきたいですね。もっと色んなことにも挑戦したいです。ダンスミュージックもやってみたいし、自分のネガティブな部分も前面に出したいし、もっと人間性のあるラップもしたいです。この音楽で自分のしたいことをやり遂げたいです。そうすればおのずと「Ride on Time」になるんじゃないかなと。

 

── 後々、自分が迷った時に自分自身に問いかけるアルバムになりそうですね。

 

自分の中で、捨て曲って1曲もなくて、何か出来事があった時は全て曲にしてきています。失恋しかり、先輩と泣きながら喧嘩した日もしかり、TERUとのクルーN-GONGが解散した日もしかり。TERUが『高校生ラップ選手権』に出て、置いていかれたと感じた日に書いたのが「The Roof Of Monday」と言う曲です。

 

だから自分の過去の曲もよく聴きます。この時、俺はこんなことを考えたんやって。多分このアルバムもそうなるでしょうね。

 

 

|Draw4 / The Roof Of Monday|

「悔しさ、嫉妬心、溢れ出す涙 燃えないゴミはくしゃくしゃに捨てた」
このリリックの背景が分かると痛みが突き刺さる名曲。

 

── アルバム発売を機に、関西以外でもライブする機会が増えそうですね。

 

立ちたいステージもあります。東京も名古屋もブッキングもらってるんで、さらに広めたいなと思ってます。あと最終、自分が上がるっていうより、お世話になったお店もそうやし、クルーもそうやし、自分の彼女もそうやし、親もそうやし、みんなで上がっていきたいです。自分は支えてもらってばっかりの人間なんで。

 

── ありがとうございました。

 

 


(取材協力店)

SCLARCH

HRKTとも関わりの深い、京都と大阪の境目にあるローカルストリートアパレルSHOP。Draw4のアルバムもこのHPより通販されている。

 

⬇︎SCLARCHのHP

 

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