【HIPHOP×ファッション】CD不況の先にあるのは何か?若手クリエイターの目線

CD不況の先にあるのはファッションか?

 

「もうCD 売ってるんじゃなくて 、T シャツ屋さんだわ!」

これは某CDショップ店長の嘆き。

 

「CD不況」そう言われて数年がたつ。


Wikipediaによると、
CD販売枚数は1998年をピークとして減少し続けていると言う。確かに街を歩いていても、レコード屋の袋をもち歩く若者を見かけなくなった。

代わりにSpotifyApple Musicといった定額制音楽ストリーミング市場が成長。著者もSpotifyとYouTube Musicを利用している。


先ほど述べたCD屋がTシャツを売るように、ミュージシャンの中にはCDの売り上げをあてにするのではなく、ツアーTシャツやグッツ、ファンクラブの年会費で収益を上げていると言う。これは音楽業界の収益構造が変革期を迎えていることを意味している。

 

HIPHOP界に目を移すと、有名なラッパーが次々にアパレルブランドを立ち上げている。


例えば、AK-69BAGARCH(バガーチ)というブランドをプロデュースしたり、KOHHDogsというショップを始めたり、KOWICHIKSL SUPPLYというブランドをディレクションしている。

 

若手クリエイターはこの状況をどの様にとらえているのか?
音楽とファッションはどんな繋がり方をしていくのか?

そんなことを2人の若手クリエイターにきいてみた。

 

▪︎1人は XakiMichele

夜猫族
という東京のクルーに所属する20才のラッパー。SoundCloudに発表した『Pussy Lake feat. AJAH』という曲が評判を呼び、大物ラッパーとの共演が噂される。2019年注目の1人。

 

 

 

▪︎もう1人は RYUYA SODA

AMUSEMENT PARK
というHIPHOPの要素を取り入れたブランドを立ち上げたばかりの21才クリエイティブ・ディレクター。会社『PLACE to PLAY』CEO。

 

 

“AMUSEMENT PARK”の展示会にて2人にインタビューを行った。

 


音楽で生活していくには「アート」を「ビジネス」に

 

──ラッパー XakiMichele と シンガー/ラッパー AJAH に衣装提供すると伺いました。どんな理由からですか?

 

(RYUYA SODA)曲がカッコ良かったからです。衣装で使ってくれるならぜひ!って感じです。

 

──Instagramを見ると、結構エッジが効いたブランドという印象を持ちました。どのあたりがHIPHOPとリンクしてるのでしょうか?

 

(RYUYA SODA)中学からやっていたダンスがクリエイディブの原点となっています。もちろんHIPHOPも聴いていたので影響を受けています。

Tシャツの袖は少し大きめに、ボディはタイトして、90年代のHIPHOPを想像させる形にしました。そこに キース・ヘリング アンディ・ウォーホル などのポップカルチャーのテイストをミックスさせてます。HIPHOPの服にPOPな色づかいは少ないので、僕のテイストを混ぜて融合という感じです。

 

 

──XakiMicheleさんから見ていかがですか?


(XakiMichele)面白いですね。この形って見ないので。


(RYUYA SODA)カジュアルでありラフでありラグジュアリーな面もある。だから、ポップラグジュアリーという言葉を使っています。

 

──ファッションと音楽について、若いクリエイターの目線でどのようにとらえていますか?

 

(XakiMichele)私はスタイリストとしても活動していたので、音楽とファッションを両方の視点で見ています。音楽業界から評価されているアーティストでも、ファッション業界からは評価されてない事がほとんどです。

逆にファッションだけが前に出てしまって音楽が付いてきていないアーティストもいます。

 

──XakiMicheleさん並びに夜猫族の音楽は、アーティスト性が高いのでファッションとの相性がいいような気がしています。いかがでしょうか?

 

(XakiMichele)相性はいいと思います。ただ、相性がいいからファッション性を磨くのではなく、音楽と一緒にファッション性も伸ばせればいいですね。

 

⬇︎夜猫族の特集記事

JPN 🇯🇵 HIPHOP ch.

HIPHOPでありながら、どことなく歌謡曲や寺山修司、宮沢賢治などを連想させる若手クルー・夜猫族。暗くなると怪しげに光る…

 

──SODAさんは音楽とファッションについてどう見えていますか?


(RYUYA SODA)音楽と服というは非常に密な関係で、同じジャンルと言っても過言じゃないです。例えばこの展示会でも音楽を流していますし、逆に皆さんは服を着て音楽を聴きに行くじゃないですか。イベントに合わせた服を選ぶとか。

 

僕も影響を受けるものが、CDジャケットだったりアーティスト写真だったりします。けっこうエミネムからインスピレーションを受けてて、エミネムを綺麗めに合わせたらどんな形になるかなんて想像したりします。

 

左からAJAHさん、RYUYA SODAさん、XakiMicheleさん、

 


──いまCDが売れない時代です。ミュージシャンはCDを売るより、ツアーTシャツやグッツの売り上げの方が大きいという話を耳にします。音楽を売ることについてどのようにとらえていますか?

 

(XakiMichele)必ず必要なこと、一生の課題だと思っています。
現代のアーティストには、音楽は「アート」という概念があると思います。

私も「アート」という概念を持っていますが、音楽で生活していくには「アート」を「ビジネス」に変えていかなくてはいけません。

 

──ラッパー ToK10 さんも、アートでお金を稼ぐモデルケースを示したい!とクラウドファンディングに挑戦していますしね。

 

SoundCloud等で総再生回数50万回を超えるラッパーTok10が、ラップ文化向上とアーティストブランド確立のために…

 

(XakiMichele)それは「売れる音楽」を作るのではなく、「アートを売り出す」という行為です。KOHHさんなんかは自身の曲で「アート」と口癖のように言ってて、生活をしています。「売れる音楽」を作るのではなく自分の「アート」を売り出して「ビジネス」を成立させている代表例です。

日本に足りないのはこの「ビジネス」の部分だと思います。

 

(RYUYA SODA)僕自身もCDを買うことが少なくなりましたね。でも同じように服も売れない時代です。安くて早いというのがすごい重宝されます。

例えばH&MやZARAといったファストファッションがその代表ですね。

トレンドが盛り上がっている間に企画して売り出す、しかもあの価格で。トレンドを気軽に着れるということで大手ファストファッションは強いですね。

 

──音楽でいうストリーミングサービスが、服でいうファストファッションのような感じかもしれませんね。

 

(RYUYA SODA)うちのブランドは、トレンドを追うのではなく洋服としていいもの追求しています。素材の良さと着やすさにこだわっています。

 

──大衆向けではないと。


(RYUYA SODA)HIPHOPもみんながみんな聴ける音楽じゃないじゃないですか?それでも自分のやりたい事を貫いていく。その姿勢に共感してもらえたら、いいファンがつくと思います。

あんな怖い言葉を使ってと批判されても、批判されないように曲作ったら売れないですよね。それは僕らのようなブランドも同じです。

 

⬇︎展示会のダイジェスト動画。インタビューの様子も収められている。

 

音楽とファッションは繋がっている

 

──他に、音楽とファッションで考えていることってありますか?


(RYUYA SODA)時代によってアーティストが着る服って変わるじゃないですか。昔はHIPHOPといえばオーバーサイズでダボダボな服一本だった。今はDOTAMAさんのようにスーツ着てる人もいるし。HIPHOP自体、定義のないものだから、自分がHIPHOPだと思う服を着ればいいと思います。


(XakiMichele)
私はいずれはブランドを持ちたいですね。

 

──どんなブランドをイメージしていますか?


(XakiMichele)
立ち上げるはまだ先になると思うのですが、日本のHIPHOP発祥のハイストリートなブランドを作りたいです。海外でも通用するストリートブランドで、APEよりもラグジュアリー感があって音楽業界とも深く関わりがあるみたいな。


──あえて意地悪な質問をしますが、ファンの中には音楽だけに集中してと言う人もいるかもしれません。


(XakiMichele)
もともとファッションが好きで服の専門学校にも通って今に至ります。ファッションに興味を持った入口が音楽でした。そして、音楽を通してファッションに興味を持ち、また音楽をやっています。なので、ファッション一本でとか音楽一本でという考えではありません。

 

──どこまでいってもファッションと音楽が繋がっているイメージですね。先ほどSODAさんが言った「同じジャンルと言っても過言じゃない」とも重なります。
お二人は今後、どのような展開を考えてますか?

 

(RYUYA SODA)“AMUSEMENT PARK”を、音楽イベントで再現したいと思っています。

あと会社名を『PLACE to PLAY』にしていて、その名の通り「ファッションは遊ぶ場所」ととらえています。服以外にも美容院やレストランなど人が集まる場所を作ることで、『PLACE to PLAY』を表現していきたいです。

 

(XakiMichele)私は、今年中にEPを3枚出すのが目標です。

ソロ名義でのEPを1枚と、自分が客演した曲を集めたEPを1枚作ります。そこで注目を集めておいて3枚目をリリースします。3枚目はまだ言えない極秘のプロジェクトが動いてます。年末か来年頭にリリースする予定です。楽しみにしておいて下さい。

 

──まずはラッパーXakiMicheleとしてのブランドを確立する感じですね。
お二人ともありがとうございました。

 

 

⬇︎『XakiMichele / Pussy Lake feat. AJAH』のライブ動画。金髪の男性は夜猫族の中心人物 noma


インタビューを終えて感じたこと

2人とも模索しながら作品を生み出し、出た結果をもとに次にやるべきことを見つけようとしていて好感が持てた。一つのジャンルに特化して突き詰めるのではなく、様々なジャンルを並列でとらえ総合的に魅せていく。そんなイメージが、“働き方革命”と言われ始めた現代の風潮と重なって見えた。

 

オンラインサロンの会員数が1万8000人を突破したキングコング西野亮廣はこう話す。

「すべてのエンターテイメントに言えることなんですけど、本業でマネタイズしている所は、もう順番に終わっていきますね」

 

変化の時代に求められるクリエイターは、確固たる軸を持ちながらも視野の広いビジョンを持ち、彼らのようにジャンルまたいで表現できる人もしれない。そんなことを感じた。

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