HIPHOP界では、時折こんな論争が始まる。
「あれはHIPHOPじゃなくて、だたのRAPミュージックだ!」
「いや、お前は新しいHIPHOPについていけてないだけだ!」
HIPHOPはサンプリング文化があるため、様々なジャンルを吸収しやすい傾向にある。ましてアメリカでは、売り上げがロックを抜きメインストリームになった。そのことで、手を付けれないほど音楽性が急拡大しているのは間違いない。
こう言った論議は、HIPHOPとは何か?と定義を確認する意味で必要である。
ただ厳密な定義付けも難しく、意味もないので、リスナー各々の価値観に委ねるしかない。
「本が売れない」と言われる出版不況の中で、ベストセラーを連発するカリスマ編集者 箕輪厚介 はこう述べている。
“イノベーションは常に辺境から起きる。
ということで今回は、HIPHOP枠をどんどん拡げていく越境のHIPHOPを10曲紹介します。
これらの曲はHIPHOPなのか?そうでないのか?とあなたの基準と照らし合わせながら聴くと楽しめます。
そして今回、新進“奇形“のHIP HOPグループ WHALE TALX の中心人物 似非animal のインタビューも掲載しています。最後までお楽しみ下さい。
以前に公開した【HIPHOPのど真ん中 BoomBap特集】と対になった内容です。
併せて読めば、よりHIPHOPを知ることができます⬇︎
クラシックなHIPHOP魂を、若い感性で受け継いだ“BoomBap”を10曲セレクトしました。各曲にレビューと、一部アー…
※ 歌詞=リリック、サビ=HOOK とHIPHOP用語で表記しています。
※ 本文で赤字のついたアーティスト名は、TwitterまたはInstagramとリンクしています
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目次HIPHOP〜シティポップの境界線
|Shurkn Pap / Sweet Dreams|
( Prod. by DJ KORK/Kosuke Harada )
魔術のようにオートチューンを使いこなす姫路の Shurkn Pap(シュリケン パプ)。トラップをベースにしつつ、ディスコやファンク、ムード歌謡などの要素を取り入れた曲でラップする。
今回手がけたのは、80年代シティーポップ。みずみずしい太めのスネア、キラキラした質感。厚くかけたオートチューンの中に声を潜ませたメロディ。ラップとシンセの中間のような音色は、シチュエーションによって聴こえ方が変わるから面白い。
⬇︎『Sweet Dreams』が収録されたEP
HIPHOP〜スカ〜レゲエの境界線
|勝 / 離れられへんネン feat. MISON-B|
大阪のdeepスポット西成出身のラッパー 勝 (マサル)。韻踏合組合でお馴染みの名門レーベルIFK RECORDSからリリースされた3年ぶりEPからの一曲。
浪速への地元愛を、スカ〜レゲエのリズミに合わせてラップした曲。人情味と下町のガヤガヤ感が上手く表現されている。
「サンプリングはOKでもソースの2度づけ禁止」
と言いたくなるほど美味しい匂いがしてきそう。“浪速の爆弾娘”といわれる女性シンガー MISON-B の大阪弁もしっくりくる。映像もドンピシャにハマる。
この曲が収録されたEP
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HIPHOP〜日本伝統音楽の境界線
|5lack / Twiligh Dive|
( Prod. by 5lack )
twilight = 日の出前や日没後の薄明り。あるいは、おぼろげな光を指す語。
「Twiligh 消えていく」
普通に読み解けば太陽のこと。しかし、和楽器を使った幽玄なアレンジ、消え入るシンセ、ミニマルに削ぎ落とした言葉から、さらに深い意味を考えてしまう。
この国が築いた礎をさか上ると未来も見えてくる。
これぞ日本でしか生まれないHIPHOP。
この曲が収録されたアルバム
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|BLOOD WILL TELL / HOKAGE feat. Leon Fanourakis & Awich|
( Prod. by Radical Hardcore Clique )
NINJAを体現するためのNINJA PROJECT。
「死ぬ覚悟は死にたいからじゃない 自分らしく生きるため We ride」
抑えを効かせることで緊張感と凄みが増す Leon Fanourakis と Awich のラップ。雅楽をベースにしたTrapは、懐古主義に陥るのではなく現代にアップデイト。その奥ゆかしさが闇の深部を切り裂いていく。
世界共通言語となったHIPHOPの中で、オリジナリティーを出すには日本文化への造詣の深さが必要だと教えてくれる。
トラックを手掛けたのは Radical Hardcore Clique 。能面をかぶったハードコアバンドFACTの元ドラマーEijiが、ドラマー兼トラックメーカーとして参加する。2DJ+ドラムという珍しいメンバー構成で、LIVEでは和を取り入れた先鋭的VJにも力を入れている。
HIPHOP〜多国籍音楽との境界線
|KOYANMUSIC×CARREC / Clap! feat.MARIA(Amazoness mix) |
相模原のクルーSD JUNKSTAに所属するトラックメーカー/ラッパー KOYANMUSIC が、KYN名義で2015年にリリースしたアルバム「PRELUDE」。
そのアルバムを、“金沢が誇る和の鉄人”ことビートメーカーCARREC (キャレック)が全曲REMIX。この曲は、コンガを用いて、ブレイクビーツとは異なるリズムで多国籍な仕上がりに。
トラックもさることながら MARIA のラップがフリーキーで見事!
タブラのような早口で始まりレゲエ調のラップに。ブレイクでのセクシーさにドキッとさせられ、HOOKでの原住民的メロディーは猿でも踊り出しそう。
鎮座DOPENESS、食品まつり a.k.a foodmanが好きならチェック。
この曲が収録されたアルバム⬇︎
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|Ganger / BATISTA BOMB|
( Beat by RATLAP )
2015年に将軍&MC 林太郎により結成。さらに諜報員FOX、踊り手MAO、Videographer BANSEI、DJ Yutaが加入し、肉感的かつ躍動感のあるライブパフォーマンスでヘッズを踊らせるGanger (ゲンガー)。
この曲が発表されるや否や、「なんじゃこりゃ?」というTweetが多く上がるほど、驚きと異物感がカッコ良く混ざった作品。どこかの部族の祈り儀式のような響きである。
この曲を語るにはHIPHOPの枠では狭すぎる。ジャンルの源流を軽々と超え、人類が古来より受け継いだ快楽音楽で間違いない!
⬇︎この曲が収録された1st Album『VISTA』
iTunes HIPHOPデイリーチャート1位、ディスクユニオンJapanese HIPHOP週間チャート1位を獲得するなど、本人達も驚くほど注目を集めている。
VISTA/GANGER (HIP HOP)/HIPHOP/R&Bの商品詳細ページです。新品CDからレコード、紙ジャケ、…
HIPHOP〜DUBの境界線
|KOBACCHI RYO / BASED|
( Prod. by Lil Thimosy & Kobacchi Ryo )
息使いの荒いドラム、血の通ったベースがうごめくダブトラック。
岩手生まれのKobacchi Ryo によるシャーマンのささやきのようなラップ。表れては消える言葉に引きよせられる。この先ゆけば光があるのか?さらに闇が暗くなるのか?
ズブズブと深みにハマっていく。
⬇︎Kobacchi Ryoがじっくりと作り上げたNEWアルバム。
温もりある歌声とHIPHOPの型にハマらないメロディが楽しめる。
Kobacchi Ryo NEW ALBUM
「 Smooth Louis 」より
トレーラー、アップします。
2019年4月5日 (金) 配信開始ストリーミングでのアルバムリリースなります。よろしくです。 pic.twitter.com/ONhQ0G25WM
— Kobacchiryo (@wstnsoul) March 29, 2019
HIPHOP〜R&B〜エレクトリックの境界線
|A.Y.A & Naclear/Weekend Lover / Raga Vibes|
( Prod. by Naclear )
シンガーでありラップも行う A.Y.A とビートメーカーNaclear が手を組んだ作品。フューチャー感ある独特なエフェクトと少なめのラップで、どこにも属さない未完成さが魅力的。HIPHOPともR&Bとも受け取れるが、危うさと生意気さが実にHIPHOPらしい。
老舗HIPHOPレーベルの中でも独自路線をいくLOW HIGH WHO? からリリースというのも頷ける。
⬇︎この曲が収録されたEP
👉次のページは、境界線が消えていく曲が2曲と
似非animalのインタビューを掲載。
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