2018年に亡くなってしまい、今やレジェンドと化したラッパーECD。彼の「TOKYO TOKYO ’97」という曲の1節にこんなリリックがある。
「止まれ 壊れたダンプカー」
この曲が発表されたのが2003年。
その翌年に産まれた男の子が、今やダンプカーのように全てをなぎ倒し、猛烈な音を立てて突き進むラップをしている。
それが今回紹介する Dumbperson(ダムパーソン)だ。
彼は2004年生まれの15才の中学生。次回の「高校生ラップ選手権」にエントリーするというツイートがあり、もし出場すれば大会を大いにかき回す存在になるだろう。彼の名前が一気に全国に知れ渡る。2020年、ブレイクすること間違いない注目の若手ラッパーだ!
彼のストロングポイントとして、まず早口なラップが挙げられる。早さも3段階ぐらいのギアがあって、1番早いギアに入ると言葉がギュッと圧縮されているような密度の高いラップになる。そしてガガガガと迫りくる勢いに圧倒されてしまう。
その特徴がよく表れているのが、KID LOW との共作「011 SAVEGE」だ。特に1分6秒からトップギアに入る瞬間に注目して聴いて欲しい。
これが本当に中学生か⁉️HIPHOPがいま大変なことになっている。
|Dumb × KID LOW / 011 SAVEGE|
※ 歌詞=リリック、サビ=HOOK、ラップをしているパート=Verse とHIPHOP用語で表記しています。
※ 本文で赤字のついたアーティスト名は、Twitterとリンクしています。
Dumbpersonは他のアーティストとの共作が多い。有名なところでは、AbemaTVの正月特番「フリースタイルMonsters War 2020」に出演していた元 藤KoosことFuma no KTR (フウマノコタロウ)や、2019年にクラウドファンディングで資金を集めMVを作成した Tok10。最近、夜猫族に加盟した Tade Dust & Bonbero などと曲を作っている。
ラッパーと共演しても、彼のラップは個性的ですぐに見分けることができる。どの曲にも刺激的なスパイスを加えている。しかし、その個性は早口だけが特徴ではない。猪突猛進かと思いきや、ブレイクでワンフレーズを入れるなど静と動を巧みに使い分ける。そうすることでスキルがあると思わせるだけでなく、印象に残る楽曲に仕上げている。
ブレイクでの気の抜けた「HA」がクセになる EARTH THE KID との共作「HAHANHA」。
|Dumb person × EARTH THE KID / HAHANHA|
Dumbpersonの凄さはそれだけではない。叙情的でフォーキーなメロディも奏でており、表現方法が多彩という意味で若手ラッパーの中で頭ひとつ抜けている。
Dumbpersonと同じ2004年生まれで、DAHULから改名した dizzy との共作は、フォーキーな音響HIPHOP。言葉はイメージが固まりやすいからと、トラックから受けた直感のまま、フリースタイルで録音したというから驚きだ。奥まっていく歌声が遠くかすむほど、心の奥に眠る記憶と重なる楽曲。
|dizzy & dumb / soft love(音装詞好徒|
そんな Dumbpersonが、’19年12月18日に5曲入りのMini album 『OFF THE WALL』をサウンドクラウドから発表した。
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その中でも特に印象的な楽曲が、ストリーミング配信もされている M-③「向かう」だ。 Dumbpersonの大胆さと、先ほど紹介したTOK10の繊細さが見事に噛み合った曲である。
インドネシアの伝統音楽・ガムランっぽい旋律が怪しい雰囲気を作り出している。TOK10が歌う「See you , Good night」は、優しくあるも不気味とも受け取ることができて余計に不気味である。そこからの Dumbpersonの怒涛のラップに度肝を抜かされる。この曲をプロデュースした虎の子 大河 の構成力が見事である。
曲の中にストーリーがあって、リリックから制御できぬほどモンスターと化した主人公が、気がつけば君に向かってくると私は解釈した。あなたはどう解釈する?
|Dumbperson ✖️ Tok10 / 向かう|
( Prod. by 虎の子 大河 )
⬇︎この曲の配信リンク
最後に
本人からメッセージをもらった。影響を受けたアーティストや、今年の抱負を語ってくれている。メッセージを依頼した日以降も、サウンドクラウドでは新曲が次々とアップされている。君はこのスピードについていけるか?とにかく2020年はDumbpersonから目が離せない年になりそうだ。
□ Dumbperson からのメッセージ
── 影響を受けたアーティストは?
音楽的に僕が影響を受けたのはXXXTENTACIONですかね。
どこまでもアーティスト、ミュージシャンというか、他のアーティストには確実にない魅力を秘めています。海外のメジャーからインディーズまで色々なアーティストの曲を聴いてきましたが、やはり自分が1番聴いていて影響を受けています。
そして自分のラップにいちばん影響を与えてくれたのは、よく曲を作っているKID LOWですね。
僕の音楽の全ての根底、ユーモア、その上での技術、全てこの人から吸収したものをオリジナルに変えたと言っても過言ではないです。繊細かつユーモアで流れていくflowにインパクトのある韻。全部混ざるものではないのに違和感なく綺麗に混ざる感じ。最初聞いた時の衝撃は今でも覚えています。
── 2020年の活動予定は?
今まで2017〜2019年まで、年を越すたびに“頑張らなきゃ”という気持ちで気合いが入っているのみで確信はありませんでした。が、2020年は迎える前から「来年は僕の歳にできる」という自信で溢れています。
技術知識などの成長が急激に早い自分について理解していくのは難しいですが、その中でも今まで以上に「これきた」という曲を作って、ミュージックビデオ+アルバムなどを作っていきたいと思ってます。その時が僕の年になる瞬間の日だと思っています。