ラッパーにしか奏でられない歌がある【じっくり聴かせる日本語ラップ 10選】

ラッパーにしか君はラッパーの歌を聴きたくないか?

 

歌の上手いシンガーとも違う。
ラッパーにしか奏でられない歌がある。

 

華やかさとは真逆の痛みを伴った、
キレイごとだけじゃないさらけ出す感情がリアルを生む。

 

HIPHOPクルー・SCARSのメンバー bay4k はこう話す。

 

「HIPHOPって曲に人となりが出るんですよ」
「その人のまんまが詩に落とし込まれているんですよ」と。

 

決して恵まれているとは言えないHIPHOPシーンの現状。底辺の味わった人間だからこそ、はい上がろうとするメロディが胸を刺す。

 

という事で、じっくりと歌を聴かせる日本語ラップの特集です。当初、意図していませんでしたが、心に隙間ができるこの季節にもピタリとハマる曲たちです。

 

今回は、ラッパーのYNG JOE$さんがコメントを寄せてくれました。歌とラップの関係について語ってくれています。有名・無名問わずいい曲ばかりをセレクトしたので、最後までお楽しみ下さい。

 

※ 歌詞=リリック、サビ=HOOK、ラップをしているパート=Verse とHIPHOP用語で表記しています。
※ 本文で赤字のついたアーティスト名は、Twitterとリンクしています。

 


 

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|バブルソ / Music feat.Jambo Lacquer|

 

大阪北摂豊中からなるクルー WARAJI のメンバーであるチプルソ(ラッパー)とKazBubble(ビートメーカー)のユニット・バブルソ 。4年半振りの2ndアルバムからの1曲は、同クルーのメンバーであるJambo Lacquerを客演に迎えたナンバー。

 

「泣ける夜も 君は優しいね
抱きしめれないって悲しいね
とか思うと口ずさんでしまう
一発で包まれてしまう」

 

HOOKを聴くと、ラッパーが言葉をどれほど大切にし、どれほど音楽に救われているか思い知らされる。Jambo Lacquerの暖かい人柄が伝わる歌声。韻を踏むことで頭に浮かぶ単語を、そのまま書き留め曲にしてしまうチプルソの即興性あるリリックに注目!

 

会えない”あなた”との距離を超えて、マイクからスピーカーを通して、あなたの耳に届けられる。

 

 

⬇︎この曲の配信はこちら

Listen to Goodbye CABIN by バブルソ, チプルソ, KazBubble.…

 

 

この曲が収録されたアルバム『Goodbye CABIN
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|MAVEL x HANG x TOCCHI / August|

( Prod. by CraftBeatz )

 

1Verse目でラップしている MAVEL のツイートにたびたび登場し、今や沖縄のクルー604のアイドルと化した猫がこの曲の主人公。他者を愛でる優しさに包まれる。

604のバイブスに触れ、拠点を北海道から沖縄に移住を決めたという TOCCHI は、猫アレルギーでありながら、トイレの世話から病院まで連れていくというリリックが微笑ましい。

 

「思いつくことをして 少し寝るだけ」

さらに、猫の生き方に影響を受けたと思われるHOOKから604の雰囲気の良さが伝わってくる。

 

 

⬇︎この曲が収録された6曲入りコンピレーションEP「猫盤」

 

 

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CRACKLIMB 「 NewFunk store 」

沖縄HippyTawn【604】からコンピレーションEPがリリース!「飼っている猫の餌代を稼ぐぞ!」と各所属アーティスト…

 


|OMSB / 波の歌|

( Prod. by Hi’Spec )

 

映画『きみの鳥はうたえる』のサントラが話題になり、HIPHOPクルー SIMILABのビートメーカーとしてだけでなく、音楽家としても評価されたHiSpec

 

そんな彼が手がけたアコースティックなトラックに乗せて歌うのは、4年ぶりの新曲となる同クルーのラッパー OMSB (オムスビ) 。

 

海から見える地平線を眺めながら地球の大きさ、人が生きる意味を綴ったリリック。視野を広くするが故に、「めんどくせーんだよ マジで がんじがらめ」とちっぽけな自分が歌になる。これを聴くとOMSBの新作がどんなものになるか期待が高まる。

 

⬇︎映画『きみの鳥はうたえる』のオリジナルサウンドトラック
13曲目に、この曲のインストゥルメンタルが収録されている

 

 

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|WEEDY / Flame of Love|

( Prod. by dubby bunny )

 

ZORNや焚巻と共作のあるシンガー/ラッパー WEEDY 。

 

時の速さや、空虚な気持ちを例える詩的な描写。言葉数は多くなくても、聴く者の想像力がそれを補う映画的手法。ゆえに「変わらない情熱握る手」で力が入り、HOOKの説得力に繋がっていく。

 

そして、言葉では表現しきれない感情を描く dubby bunnyのトラック。長く伸び交差する管楽器とエレキギターは、自分の歩みを振り返る時間の長さにも、これから変わりゆく景色のようにも思える。ギターソロでフェイドアウトするのもHIPHOPでは珍しくていい。

 

 

⬇︎この曲の配信はコチラ

TuneCore Japan

シングル • 2019年 • 1曲 • 4分…

 


|YNG JOE$ / I LOVE YOU|

( Prod. by abentis )

 

柳ジョージの意思を受けつぐ愛知県東海市を拠点に活動するYNG JOE$(柳ジョーズ)。みずみずしさのある歌心。

 

「死んだ友達の歌をうたったり」

 

忘れないけど薄れていく感覚への戸惑い。後半の車中で泣いているとも叫んでいるとも取れるシーンは、いく通りにもできる解釈。理由を探そうとリピートしてしまう。

 

※ 歌は自分の武器だというYNG JOE$さんからコメントをもらいました。ラッパーとして歌をどのようにとらえているのか。また、この曲がどのようにできたかを語ってくれています。

 

 YNG JOE$さんのコメント

リリックは、日々書きためたものをピックアップし、ビートから感じたものや景色の言葉を足して、大体のフローを把握しながら文字数を整えてます。フローはレコーディング時に感覚でする感じです。歌は瞬間的な感情を残すものと思います。

 

「I LOVE YOU」は、多くの事を思い出していた時、abentis君からビートが送られてきました。30分かからない程でリリックを書き終えましたね。次の日にはスタジオでレコーディングし完成しました。元々はラップが乗る予定は無かったようなのですが、勝手に僕が乗せてしまった感じです。

 

 

⬇︎この曲が収録されたEP『23』

 


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|SPARTA / ALIEN ft KID FRESINO|

 

拠点を熊本から東京に移したラッパー SPARTA 。

 

SUSHIBOYS「DRUG」のMVを手がけるなどビデオグラファーとして、はたまたスケーターとしての顔を持つ彼は、余計な力を入れず自然体で、どこか冷めた視線がクールであった。しかし、この曲では一変。

「見上げてる空に届く事無く、終わるなんて嫌」

 

家族ができた影響か?感情をむき出しにして声を張り上げる。

 

前作「いつも通り」では映像を手がけた KID FRESINO を客演でラップを披露。SPARTAに語りかけるようにエールを送っている。後奏で鳴るブルージーなギターが胸を引っかく。

 

 

⬇︎SPARTAの 1stアルバム『3』  ※「ALIEN ft KID FRESINO」は次作に収録予定

TuneCore Japan

アルバム • 2019年 • 10曲 • 30分…

 


|D96 / Brosandi|

 

ロックの影響を感じさせる東京世田谷区が拠点のラッパー D96

 

新潟県糸魚川市を舞台に、忘れていたものを取り戻すロードムービーのような仕上がり。川の水の冷たさ、虫の鳴き声、笑い声といった幼少期の記憶が匂いを伴って蘇っていくよう。

 

丁寧な描写の積み重ねたリリック、誰かを思い語りかけるフロー。シンセのバックでなっているバイオリンや、どこか唱歌を思わせるコーラスが郷愁を生んでいる。

 

「ありがとう」この言葉が胸に残る。

 

 

⬇︎大切な人が亡くなってから、曲を書きためたというアルバム『EDEN』

 


|Tok10 / anthem|

 

バチバチのTrapをカマす一方で、繊細なメロディを奏でる若手注目の Tok10 

 

「君の目に映るものを全て聞かせてよ」

 

瞳を通して見える未来を、自分が歌うことで明るく確かな物にしていく。フォキーな質感から感じる、懐かしさ新しさが混ざるセピア色の景色。

 

⬇︎この曲の配信はコチラ

TuneCore Japan

シングル • 2019年 • 1曲 • 3分…

 


|HARZEY UNI / Untitle|

 

大阪 寝屋川を拠点に活動するUNIQONのラッパー HARZEY UNI(ハジユニ)。

 

「ずっと1人で歩いていたと思っていたけど
気づかなかっただけ いつも誰かが側にいてる」

 

とふと立ち止まり自分を見つめる。レゲエをベースに感謝と悲しみがブルージーな歌を生む。洗練とは違う人懐こさに下町の温もりを感じる。

 

⬇︎こちらはHARZEY UNIのちょっぴり切ないダンスナンバー

TuneCore Japan

シングル • 2019年 • 1曲 • 6分…

 


|SNEEEZE / GOODBYE BADMIND|

( Prod. by 774 )

 

これは令和時代に贈る新しい「上を向いて歩こう」。

 

抜群のメロディセンスがあり、HIPHOP・レゲエをまたにかけ表現する兵庫のラッパーSNEEEZE 。歌と向き合ったこの曲は、みんなで口ずさめるよう、テクニックに頼らないシンプルな言葉を選んでいる。

 

「I Say Goodbye サヨナラ
別れを告げる自由の歌」

 

ラッパーだから寄り添えるハードな状況。目線を少し変えるだけでネガティヴがポジディヴに変わる。未来から手を差しのべれられているような優しさに満ちている。一緒に歌えば歌うほど未来が明るくなる。そんな力ある楽曲。聴くだけでなく、一緒に口ずさむとより曲の良さが伝わる。

 

 

⬇︎この曲が収録されたアルバム『Lonely Kings』の配信はコチラ

TuneCore Japan

Album • 2019 • 12 Songs • 34 mins…

 


終わりに

皆さん、いかがでしたか?
どれもええ曲やないかい!と思って頂けたらと幸いです。

 

今回は、いわゆるエモい選曲でしたが、クールな歌ものHIPHOPが好きな方は、下の記事ものぞいて下さい。今回の記事と併せて読むと、より一層HIPHOPが好きになるはずです。

 

JPN 🇯🇵 HIPHOP ch.

シンガー顔負けの歌を聴かせるラッパーの曲を10曲紹介します。なぜかイケメンが多いから不思議。ラップもできて、歌もうた…

 

また、こんないい曲なのに紹介しないのはもったいない!っていうオススメがあれば、私のTwitter(https://twitter.com/drumshisho)までDMを下さい。お待ちしています。

 

では、次の記事で会いましょう👋

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