枚方のラッパーDraw4 1stアルバム『Ride on Time』を語りつくした8000字インタビュー

 

大阪府枚方市

大阪人でないと、この市の名前を正確に読めないだろう。
“まいかた” ではなく、“ひらかた” と呼ぶローカルな街、いや町だ。

 

この町で行われたサイファーをきっかけに HRKT というクルーが作られ、多くのラッパー達がしのぎをげずっている。クルーのYouTubeチャンネルには143曲もの楽曲が公開され(’19年9月17日現在)、いかに切磋琢磨しているか分かるだろう。

 

 

そのクルーの中心人物が、9月7日に1stアルバム『Ride on Time』のCD盤をリリースした Draw4 だ。

 

スタイリッシュな出で立ちからは、彼がラップをしているとは想像もつかない。いわゆるB-BOY像とは違うが、一歩前にでる、堂々としたステージングは細身の身体を大きく見せる。客は、彼のストレートな感情に共感を覚え、いつしか身体を揺らしている。

 

HIPHOPが好き好きでたまらないという愛情を感じる一方で、マイクを握るゆえに苦しい思い、悔しい思いをすることになる。ドラッグに逃げるなどの屈折はしていないが、常に葛藤が渦巻いている。そんな思いすらリリックに注がれた曲たちが並んだアルバムだ。

 

「俺しかできへん事って何かな その答えはきっと歌詞の中にある」

ソウルフルで、時に熱く、時にクールなメロディ。芯の強い言葉たちが、背骨のようにアルバムに太い筋を通し、聴く者の心を動かす。Draw4が歩んだ後ろには、HIPHOPの新しい王道ができると思わせてくれる。

「全然20分じゃ足らないと思うので、どこまでも喋りますよ」

取材場所に現れた好青年は、クルーのこと、同じ中学の同学年でありながら先に知名度を上げていったTERUのこと、CDの発売にこだわった理由やリスクを抱える怖さなど包み隠さず語ってくれた。8000字にもおよぶインタビューをぜひお楽しみ下さい。

 

※ 歌詞=リリック、サビ=HOOK、ラップをしているパート=Verse とHIPHOP用語で表記しています。
※ 本文で赤字のついたアーティスト名は、Twitterとリンクしています。


 

 


1st アルバム『Ride on Time』

 

 

◼︎TRACK LIST

1.Intro-life-  beat : ryuki Sumi
2.溺れ  beat : DJ Rin
3.Push  beat : SOTAROBEATS
4.Keep ma mind  beat : boy2kins
5.realize feat KZ  beat : ONGR
6.Skit -始まりの日に-  beat : boy2kins
7.始まりの日に  beat : DJ Ken
8.Kanjou mid night  beat : Missy
9.Romance  beat : Missy
10.Never let go feat LEAP  beat : KNOTT
11.Hey girl  beat : SOTAROBEATS
12.2018  beat : ONGR
13.すぐ隣 feat TERU  beat : HaL
14.Ride on Time  beat : ryuki sumi

 

⬇︎配信リンク

配信開始日:2019-07-21

 

この後のインタビューで語られるこだわりの詰まったCD盤
⬇︎
通販リンク(14曲+限定ステッカー+特別メッセージ) 

発売日:2019-09-07

 


Draw4 インタビュー

photo by はる

 

サイファーがなかったら、今頃ファッションの方に行ってるはずです。

 

── 見た目の話からで恐縮ですが、Draw4さんの出で立ちはいわゆるB-boyとは異なります。ゆえに何に影響を受けてHIPHOPを始めたのか気になります。

 

なんでこういうルックスかというと、元々モデルになりたかった人間で、ファッションショーで歩いたこともあるんですよ。お父さんが昔、ファッション業界に携わっていたので、その影響をすごく受けました。HIPHOPとは疎遠で、中学の時もそんなハッチャケている人間でもなかったんです。

 

── そしたらアパレル業界で働くことを考えてたんですか?


ずっと考えていましたね。きっかけは、中学でHIPHOPブームがやってきたんです。そこからHIPHOPを聴き始めて、“電波少女”であったり“唾奇”であったり色々聴いていました。

 

── 唾奇さんがきっかけになるんですね!(つい最近のことにビビる)

 

でも音源より『高校生ラップ選手権』『UMB』などのMCバトルから入りました。

 

── そういう世代なんですね。



ある日、Twitterに「第1回 枚方サイファーができます」というツイートがあると友達に教えてもらって、Scooby Jさん、K-spit/けんしろーさんを中心にやってたサイファーの輪っかに飛び込んだのがきっかけです。

 

── 京阪電車の枚方駅すぐの岡東中央公園ですね。

 

 

そこに同じ中学の同学年やった TERU もいて。だからラップを始めた時期がTERUと全く一緒なんですよ。

 

── それはスゴい!運命を感じますね!

 

それまで上辺だけの関係やったのが、次の日から毎日遊ぶようになりました。サイファーがあることを教えてもらわなければ、今頃ファッションの方に行ってるはずです。

 

── クルーであるHRKTは、枚方サイファーに集まっていた人達で結成されているのですか?

 

HRKTは枚方サイファーの初期メンバーでできたクルーです。だから枚方サイファーに遊びに来るけど、HRKTには所属していない子もいます。HRKTと枚方サイファーは別物なので。

 

── アーティスト写真を見たら相当な人数でしたけど、総勢何人いるのですか?

 

 

いま14人ぐらいのクルーなんですけど、僕も把握してないくらい大所帯でやらせてもらってます。

 

バトルでは何も残せなくて逃げて、音源を書き出して、いつからかLiveしてた感じです。

 

── それにしてもTERUさんとは運命的な出会いですね。

 

そうですね。TERUとはN-GONGというクルーを組んでいたこともあるし、親友であり、今でも一番刺激を受け合ってる仲間です。

 

── TERUさんは当時からYouTubeのチャンネルで曲を次々と配信していましたし、『高校生ラップ選手権』や『フリースタイルダンジョン』に出場などバトルMCとして有名になっていきます。

 

自分が今Live中心の活動スタイルになったのは、TERUのおかげでもあります。TERUはMCバトルで名を上げてて、自分はステージの下からそれを見てました。自分もMCバトルに出てたんですけど、何も残せなくて逃げて。何か残さなヤバいってなって、音源を書き出して、いつからかLiveしてた感じです。

 

京都のグラインドって箱で初ライブをやったんです。そこに偶然遊びに来てたオーガナイザーの しゅがぁ さんがライブを褒めてくれて、『HOOK UP』『RING RINK』と言うイベントに呼んでもらった感じですね。あの人が「Draw4はやばい」って色々なところで言ってくれて感謝しています。

 

 


── 6曲目の「Skit -始まりの日に-」で、TERUさんとは神社でラップしまくったというエピソードを話されています。

 

枚方サイファーは毎週月曜日で、それ以外の日はどこでラップやる?ってなった時に、みんなが一番集まりやすい場所が菅原神社でした。もう毎晩、週7、8ぐらいでサイファーしてました。そこに来てたのは、TERU、YUUさん、一寸法師、広島に飛び立つ前のCOBRAScooby Jさん、IM 君、けんしろーさん、ちるぼーい、皆いましたね。もしかしたら神社の方が濃いかもしれないです。

 

── TERUさんは、バトルもできて、メロディもかけて、Trapできてって万能型じゃないですか。そんなTERUさんよりも先にフルアルバムをリリースした事に意味がある気がしますが、いかがですか?

 

はい。それはこの関西HIPHOPの若手のシーンで、アルバムのリリースを切っている奴はおらん、フルアルバム切ってる奴おらん、ってなった時に自分が一つ頭抜けなあかんと思って。

 

だからTERUよりも先に出すってのは決めてたし、この界隈で一発目に出すってのは決めてたし。そうですね、自分が音源とLiveで活動するって決めたんで、そういう意味では自分がやらないとあかんと思ってました。

 

── その心意気はアルバムから伝わります。


ここからが楽しみで、MVを3本撮りました。9月7日にソロイストっていう60分のライブももらってるんですけど、そこに初めてCDを持って行って、ようやくリリースという形で一歩踏み出します。

 

9月中にもう一本MVをアップして、多分10月ぐらいにもう一本MVをアップします。ここからDraw4、Draw4、Draw4と露出する予定です。

 

── すでに「Never let go feat. LEAP」は公開されています。ライブのMCで、LEAPさんへの特別な思いを語っていましたね。

 

|Draw4 / Never let go feat. LEAP|

(アルバム『Ride on Time』 10曲目に収録)

 

リスナーとして音源を聴いていた時に、沖縄のHIPHOPに出会って、色々聴いていくうちに LEAP というラッパーを知りました。気持ちいいメロディーと言葉の強さと、その裏に隠された何かがあって。いつかこの人と一緒に曲をやりたいなって思ってたんです。1stアルバム制作をきっかけにお誘いをしたら快く受けてくれました。LEAPさんからMVにしようと提案してもらいました。一つ夢がかなった思い入れのある曲です。

 

── あの曲はLEAPさんのメロディを生かしていますね。

 

一緒にやるなら、メロディをつけてもらおうと決めてました。最初のデモは、鼻歌で宇宙語みたいなメロディが送られてきたんです。そこにリリックを乗っけて、やっと2人の作品になった感じですね。


── その宇宙語みたいな時でも、LEAP節になっているのですか?

 

もう、LEAPさんのメロディでしたね。

 

── 逆に、KZ さんとの曲「realize」では、Draw4 さんが曲作りを主導して、その上でKZさんに自由にラップしてもらう感じがしました。

 

そうですね。KZ さんは梅田サイファーで兄貴的な存在で、『華金』と言うイベントにも出させてもらって、1番面倒をみてもらっていました。あと梅田にはKennyDoes さんがおるなら、枚方には TERUがおって、梅田にKZさんがいるなら、枚方にDraw4がおって。KZさんと喋っている時に「それやったら俺らが先に行こうや」って話になりました。だから、僕のVerseは「This is in my life 俺は先に行くぜ」で締めています。俺らが街を引っ張るぜって曲ですね。

 

自分のリリックの熱さと、KZさんのリリックの強さと、自分のメロディを混ぜて、ちゃんとしたクラシックを生み出そうという所から入りましたね。レコーディングが終わった時、KZさんが「優勝や!」って言って、僕も「優勝しましたね」って(笑)

 

── あとフィーチャリングされているのは、先ほども話に出たTERUさんですね。

 

もうTERUは絶対に入れるって決めてたんで。

 

── 13曲目「すぐ隣」はメロディの良さが光ってます。

 

この曲は3拍子なんです。

 

── そう言われたら3拍子ですね。ワルツみたいに体が横揺れします。

 

最初、あれを4拍子やと思って聴いていて、リリックを乗せようと思っても乗せれなかったんです。それでトラックメーカー HaL に言ったんです。「このトラックおかしいわ」って。そしたら「3拍子やで」って返されました。

 

一番身近な物をテーマに書きました。すぐ隣っていうのは、近すぎて見えなくなる事もあると思うんですよ。仲間であったり、彼女であったり。迷惑かける事もあるんですけど、我に返った時にそう言う人たちが一番大切やから。形じゃない、幸せであったり、満足感であったり。そういう人たちがいなくなってしまったら全部なくなってしまうから、せめて曲に残そうかなと。メロディは僕が考えました。

 

── そうなんですね。てっきりTERUさんのメロディだと思っていました。

 

よく言われるんですけど、僕が考えました。3拍子で歌うってのが難しすぎて、何回も録り直して時間がかかりました。リズム感はTERUの方があるんで、レコーディング中もTERUが横についてくれて、先にTERUが音入れして、その後で自分が入れるみたいな。

 

HRKTで言ったら、僕が陽で、TERUが陰みたいな所があるんです。それがちゃんと曲に表れていて、僕はポジティブな事言ってるのに、TERUは「MY GIRL MY FRIEND それ以外は死ねば 」って完全に陰の部分が出てる所が面白いですね。

 

── すぐ隣について、2人の感じ方の違いが深いコントラストになっています。

 

この曲のMVも撮りました。天橋立まで行って、花火して、水切りして、TERUとチャリを2ケツ(編注:2人乗りのこと)して、駄菓子屋でアイス食って。なんか青春時代に忘れかけてたものをテーマにして、hiroto kawagoeさんに撮ってもらいました。

 

── Draw4さんのすぐ隣と言う意味で、Liveで組んでいるDJ TIPさんはどんな存在ですか?

 

左は取材の応援に駆けつけた DJ TIP

 

僕がTIPと組んだきっかけは、『HOOK UP』のDJタイムで初めてクラったのが DJ TIP だったんです。僕はその時、1st EPを無料配布してて、向こうもMIX CDを500円で手売りしてました。そのMIX CDを初めて買ったのが僕やったんです。

 

その後、僕がLiveバトルに出る時に、彼にバックDJを任せてみようかなと思って。じゃあ優勝したんですよ。それをきっかけに一緒に組んでます。Liveのセットリストを考える時も、僕中心に考えるよりはDJを中心に考えています。曲と曲の繋がりであったり音のことを、TIPが1番理解しているんで。

 

TIPと組んでからは、僕のLiveもいい方向に変わったと思います。1番波長が合いますし、なんやかんや僕のことを理解してくれています。

 

── クルーであるHRKTについてもお尋ねします。3曲目「Push」では、「仲間のケツは 仲間で叩く」というリリックがありました。

 

それはね、、、もう、、(少し間をあけて)


自分はどちらかというと、平和なことを書いて仲間に勇気を与えるみたいな人間やったんですけど、初めてそれを破った曲です。クルーの中でも動いてない人がいたり、まだこいつもっと行けると思う人がいたりします。そいつらに一番言ってあげれるのって自分たち仲間ですから。

 

photo by はる

 

── Draw4さんはクルーを先頭で引っ張ってる感じですからね。

 

僕が先頭を切ってるかは自分では分からないです。でも引っ張っていきたいし、それこそ自分が曲書いて、それを聴いた人が動いてくれたら、尖った歌詞であっても仲間を助けられるかもしれません。自分の挑戦でもありますね。

 

それに関して言うと、クルー主催のイベント『HRKT Vo.3』を打つ時に、レギュラーメンバーはいつも持ち時間15分でLiveしてるんです。けど僕とTERUから見て「最近こいつどうした?」「絶対もっといけるやろ」ってメンツには、タイムスケジュールに持ち時間5分って提示したんですよ。

 

じゃあ後輩たちからは「何でなんですか?」と連絡がきて。けどそれは正直に思いを話ました。そういうのがあるからこそ、イベント当日までに新曲をいっぱい作ってきたてました。そうなることを信じてたんで、当日は15分Liveをやってもらいました。あのリリックは、その時の話でもあります。

 

クルーには色々な人がいるので、難しい部分もありますね。

 

 

── HRKTは色々なスタイルのラッパーがいますよね。


TERUみたいな、自分の悪い部分、根暗部分みたいな日常を、ああやってきれいな形に出せるのもいい奴もいるし。自分みたいに人に力を与えたいという所から、より日常に寄りやすいようメロディつける奴がいたり、YUUさんみたいにBoomBapする人がいたり、一寸法師みたいにダークな曲をする人がいたり、教師をしながら戦っているoutsiderがいたり。ほんま色々な人がいます。

 

 

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